おもしろうて、やがて悲しき「浮きこぼれ」

 「落ちこぼれ」には教育評論家もTVドラマも関心が強く、文科省でさえ「ゆとり教育」で応じたほど。ところが、「浮きこぼれ」は放置されたまま。
 私の塾生には東大・京大・国立医学部を志望する子が多い。帰国子女の子もいるし、英検準1級を持っている子もいる。そういう子は
「いつか日本の(世界の)科学技術を前に進める手助けがしたい」
 と夢を語る。しかし、現実はどうだろう。モヒカン少年の隣に座らされ、泣きたくなるような低レベルの授業が展開される。
 それで、経済的に余裕のある家庭の子は塾や予備校に期待する。まずは、金看板の有名塾。でも、私は知っている。14年間も名古屋の7つの有名予備校・塾・専門学校で英語講師をしていたからね。東大卒講師に会ったのは一回だけ。英検1級の賞状は職員室では「水戸黄門の印籠」くらいの威力があった。
 泳げないスイミングスクールのコーチがいたら詐欺。しかし、塾業界では
「京大に落ちて同志社に行った先生が、京大受験指導をしている」
のが普通です。ムリもない。私が合格した25年前の三重県では英検1級は年に1人か2人しか合格しなかった。京大を卒業して塾講師になる人も少ない。需要に供給が追いつかないのです。
でっかいメガネをかけて、髪の毛はボサボサで、今時ありえないジャージの短パン姿でヒョコヒョコ歩いている子もいる。見た目では笑うしかない。でも、よく見ていると悲しくなってくる。
塾生のAくんは、名古屋の有名塾の最高ランクのクラスをやめて私の塾に来た。すると、有名塾に在席している子たちは
「オレたちを馬鹿にしている!」
 と憤ったそうです。そんなつもりはないのにね。どうしても孤立が避けられない。私の塾はそういう子のための特別個人指導の月謝が14000円。3年来ても50万円余り。ヤンキーな先生や生徒の映画を撮るお金のほんの少しを回してくれたら、そういう日本の宝のような子を救えるのに。
暴走族先生や、ヤンキー先生ばかりもてはやすのはやめよう。暴走族になったことなんか、ちっとも誇れることじゃない。高校生クイズなんかじゃなくて、もっと普通に地味に頑張っている「浮きこぼれ」に寄付をしてくれる人はいないものだろうか。
 投資をしてくれたら、その「金の卵くん」は恩義を感じてきっと100倍にして返してくれるはずなのに。