アトムより愛をこめて(1)

 「地上最大のロボットの巻」を読んだ時、私は小学2年生だった。それでも、ゲジヒト刑事やヘラクレスプルートウに敗れたのは油断からだと分かった。エプシロンが子供を守るために手だけを残して爆破させられたシーンには涙が流れた。
 そのプルートウもボラーに負けて角だけが残った。その角をアトムが握って
「今にきっと皆が仲良く暮らせる時代になると思いますよ」 
 とか言ったコマは長く心に残った。
「そうだ、ボクもいつか世界中が仲良くできる時代を作るために頑張るぞ!」
 と堅く決意したものだった。
 さて、40年が過ぎて世界はどうなったか。相変わらず世界中で戦争が絶えない。それどころか、私は身近なトラブルさえ解決できないのだ。大規模塾で働いている時、職員室では
「あんなバカ、どこにも受からない」
 と言いながら、保護者が来ると
「大丈夫、私にお任せください」
 と営業スマイルで営業トーク。嘘つきだけど、私には何もできない。本当のことを言ったら(「合格ムリ」とか)逆ギレされて
「あんな塾だめよ!!」
 と悪評をバラまくに決まっている。